普通の旅行なら、夜は休む時間だ。一日中歩き回り、観て、楽しみ、味わって、体力はもう底をついているはずだから。ゆっくり夕食をとり、デザートまでいただいたなら、出かけるのも面倒になる。最近のように暑い日ならなおさら、誰でも夜になるとへとへとになってしまうはずだ。
でも、釜山を旅するなら、体力を補給してでも夜を楽しむ準備をしなければならない。どんな街よりも素敵な360°違った魅力が、釜山の夜には隠れているからだ。昼間もいいが、夜になるともっと素敵になるスポットが、釜山のあちこちにある。この夜を見逃してしまうなら、釜山を半分しか楽しんだことにならない。『ジキル博士とハイド氏』のように、昼と夜でまったく違う魅力あふれるスポットに、これから一緒に出かけよう。
五郎台
五郎台は、機張を代表する景勝地だ。青々とした東海に、奇岩怪石が映える素敵な風景を演出している。海に出ていく漁師たちの安寧を祈願する龍王壇は、異国的な雰囲気を漂わせている。大都市にある海とは信じられないほどの風景だ。
五郎台の「五郎」は、「五人の男」を意味する。その昔、機張に島流しにされた五人の儒生が、海辺の岩壁の上に丸く座って風流を楽しんだことに由来する地名だという説がある。
五郎台の旅は、早朝から始まる。海に面する釜山は、どこからでも海の日の出を望むことができるが、その中でも一つ選ぶなら五郎台の日の出に限る。岩を飲み込むばかりの荒波が休みなく押し寄せる早朝。大海原を望んで建つ龍王壇から、揺れ動く陽の光が漏れ出し、うっすらと海を照らす。漆黒の暗闇の中から姿を現した水平線が赤く染まったかと思うと、丸い太陽が海の上にすうっと昇る。同時に、胸の中にも熱いものがすうっと湧き出てくる。五郎台でなければ、なかなか体験できない感動である。
五郎台の周りには海岸散策路がよく整備されている。海を正面に見て、左手に行くと大辺港、右手に行くとヒルトンホテルまで歩ける。ヒルトンホテルから出発し、五郎台を経て大辺港まで歩いて巡るコースは、半日観光にぴったりだ。海雲台や広安里の喧騒から抜け出し、静かでのんびりした機張の海を満喫しながら、思索にふけるのもいいだろう。
夜になると、五郎台はロマンチックな雰囲気になる。都心ではなかなか見えない星たちのおかげだ。人工の光が多くない機張の海は、星を眺めるのにうってつけの場所だ。五郎台の周りは山に遮られているので、特に星がよく見える。月の見えなくなる晦日に合わせて訪れると、肉眼でも夜空にあふれる星を観ることができる。波の音を聴きながら輝く星を眺める素敵な時間。「ロマンチック」とは、こんなときに使うことばではないだろうか。
これで終わりではない。深い暗闇に包まれた海にも「星」が浮かぶ。水平線に沿ってきらきらと輝く灯りたち。漁船が灯す集魚灯である。夜空の無数の星のように、海にも無数の星が、毎晩現れては消えていく。夜の海の魅力をたっぷり感じたいなら、五郎台がおすすめだ。
海雲台・尾浦
海雲台は知っていても、尾浦は知らない人がほとんどだ。海雲台海水浴場のにぎわいに隠れ、釜山の人々もよく知らない場所だ。映画『海雲台』で主人公のお店があった場所だと言えば、ピンとくるだろうか。
海雲台海水浴場から海に向かって右手の端が冬栢島で、左手の端が尾浦である。冬栢島は、美しい自然の風景と背後に空高くそびえる摩天楼と、その素敵な夜景まで楽しめる釜山を代表するホットスポットとなっているが、反対側にある尾浦は正反対だ。まだまだ、観光客よりは地元の人々が多く訪れる所だ。
海雲台海水浴場に沿って松亭方面に向かって歩くと、つきあたりに刺身センターと遊覧船の船着場がある。海に沿ってもう少し進むと、小さな港のある漁村に出る。ここが尾浦だ。海雲台海水浴場にこんな漁村があったのかと思うほどの見慣れぬ風景に、初めは少々びっくりしてしまう。
すぐにでも漁に出そうな小さな漁船が並び、ドラマで見たような古い食料品店もある。小ぎれいに整備された観光地の港ではない。地元の人々の暮らしそのものだ。ところが、見上げれば100階建ての超高層ビルが港を見下ろしている。周りはこんなに速いスピードで変わっているのに、ここはそんな時代の流れとは関係なさそうにみえる。そんな、異質な感覚が魅力だ。
港から路地に沿って奥に進むと、つきあたりにカフェがある。道は、そこで行き止まりになっている。ここが、まさに釜山最高の夜景の名所だ。海雲台海水浴場からマリンシティ、冬栢島、広安大橋、二妓台まで。海岸に沿って広がるドラマチックな釜山の夜景をパノラマで楽しめる。
夕方に訪れると、広安大橋の向こうに陽が沈む素敵な風景も観ることができるので、それこそ一石二鳥だ。百万ドルの香港の夜景にも劣らない釜山の夜景をバックに、屋外のテーブルに座って新鮮な海の幸を味わって一日を締めくくれば、これより充実した旅もまたないはずだ。
荒嶺山烽燧台
釜山を一望したいなら、展望台に上る必要がある。山の多い釜山は、山頂にある展望台があちこちにあり、荒嶺山烽燧台もその一つだ。荒嶺山は釜山の中心にある山なので、東西南北に釜山の全域を望むことができる。左手に海雲台を望むと、正面に広安里、右手には影島と南浦洞、後ろには市庁がある蓮山洞と東莱、そして金井山まで、360°のパノラマビューが広がる。
頂上まで往復2車線の道路が整備されているので、山登りの心配はご無用だ。駐車場からウッドデッキを10分ほど登れば、四方が開けた烽燧台展望台に出る。眼下に釜山のシンボルである広安大橋があり、釜山港大橋と影島から、遠くにはセンタムシティと海雲台までを一望できる。
烽燧台の周りには、散策路と探訪路がよく整備されている。歩くのに自信があれば、稜線を辿ってサジャ峰まで行ってみよう。烽燧台展望台からは見えなかった所まで、細かに観ることができる。道に沿って広安里方面に下りながら、途中途中にある簡易展望台に上って釜山の様々な姿を観るのもいいだろう。
早朝に行くと海雲台の方から陽が昇る様子を、夕方に行くと松島の方へと陽が沈む様子を観ることができる。日の出と日の入りをどちらも楽しめるスポットなので、どの時間帯に訪れても印象的な風景に出会える。
夜になると、荒嶺山烽燧台はますます魅力を増す。釜山の夜景のギフトセットとでも言うべきか。釜山のほぼすべての夜景スポットが、ここ一ヵ所で楽しめる。山から見下ろす釜山の夜景は、地上で見るのとは次元が違う。二次元の平面が、三次元の立体となってより躍動感がある。写真家たちが重いカメラを抱えて山に登る理由でもある。釜山花火祭りを一番立体的に観られるのも、ここ荒嶺山烽燧台である。
利用案内
住所
五郎台:釜山広域市機張郡機張邑侍郎里
海雲台尾浦:釜山広域市海雲台区タルマジギル62番ギル33-1
荒嶺山烽燧台:釜山広域市釜山鎮区田浦洞50-1
休業日
年中無休
営業曜日及び時間
毎日
利用料金
無料