蒸し暑さが猛威を振るう真夏の釜山。閑散としている広々とした三楽エコパークに、少しずつ人が集まり始める。いつの間にか、公園の一角に設置された大きなステージの前は、押し寄せた大勢の観衆でにぎわっている。やがて全身に響くビートと強烈なサウンド、ストレスも吹き飛ぶようなボーカルの歌声が、公園中を熱く盛り上げる。バンドが繰り出すリズムに一つになった人々が一斉にジャンプする足音はもう一つの楽器となり、雰囲気はクライマックスに向かう。蒸し暑い7月、音楽を全身で浴びる釜山ロックフェスティバルのワンシーンだ。
2000年からスタートした釜山国際ロックフェスティバルは、韓国で一番歴史のあるロックフェスティバルに位置付けられている。フェスの期間中は、釜山をはじめ全国のインディーズ・バンドと、国内外のトップバンドが大勢参加する。そのため、国内外のロックマニアたちは、1年中このフェスを待ち望んでいるほどだ。広い緑の芝生が広がる三楽エコパークのフェスティバル会場に足を踏み入れると、いよいよ楽しい2日間の音楽の旅が始まる。
集まった観衆の間に、高く掲げた旗を中心に身体をぶつけ合いながら盛り上がるグループがちらほらいる。お気に入りのミュージシャンに対する応援すら、まさに「ロック」だ。釜山国際ロックフェスティバルならではのものすごいエネルギーの中で、退屈な日常は、いつの間にか頭の中からすっかり消えている。
しかし、本格的なフェスティバルはまだまだ。しっかりとフェスを楽しむために、まずは腹ごしらえをしておこう。長い行列ができているフードブースでは、視覚と臭覚を同時に刺激するおいしそうな料理が待っている。のどの渇きをうるおす一杯のビールもあれば、フェスを楽しむこの上のない組み合わせだ。
次にやるべきことは、芝生にシートを敷いて自分だけのVIP席を作ることだ。ここまでが終わったら、音楽にハマる準備はもう十分。甘いメロディのロックバラードが流れる時はまったりと芝生に横になってライブを楽しみ、みんなを熱くさせるエネルギッシュなバンドが登場したら、立ちあがってみんなと一緒にジャンプしながら、体中の熱いエネルギーを発散するのだ。
いつの間にか夏の太陽が沈んで暗闇が訪れると、フェスティバルはクライマックスに向かっていく。華やかな照明と花火が音楽と一つになって、ファンタスティックなシーンを演出する。ステージの前に押し寄せた観衆が振る手は、まるで波のようだ。歓声が上がり、一斉に声を合わせて歌を口ずさむ。ミュージシャンと観衆がひとつになれる真夏の夜の祭典は、真夜中になっても終わりそうにない。