釜山・海雲台から松亭まで続く海岸線に沿って歩くと、尾浦・青沙浦・九徳浦の3つの入り江がある。タルマジ(月見)の丘にある林の中の小道を抜け、海松橋を渡って南に下ると青沙浦にたどり着く。
青沙浦は、防波堤の上にそびえる双子の灯台とユニークな海上スカイウォークがあることで有名で、国内外の観光客にも人気のスポット。特に最近では、青沙浦の町を我が物顔で歩く野良猫たちが、この小さな漁村の町おこしに一役買っている。今、「青沙浦猫の村」は新しい人気の検索ワードだ。
青沙浦猫の村は、台湾・猴硐(ホウトン)猫村のようにたくさんの野良猫たちに出会えるスポットというわけではない。この町の猫たちは昔から漁船が戻ってくる時間に合わせて動き出すので、漁船が頻繁に出入りしなくなった最近ではめっぽう警戒心が強くなっている。餌付け場所を中心にのそのそと歩き回り、餌が出される頃や餌を食べた後に毛繕いをしながら過ごす時間になると姿を現すのだ。
青沙浦の坂通りには「コヤンイバルチャグ(猫のあしあと)」というペット用品ショップがある。この店では、以前から近所の野良猫たちに餌をあげている。そんなお店の地道な努力は海雲台区の支援につながり、野良猫のための餌付け場所が他のお店にも設けられることになった。
このお店だけでなく、青沙浦では飲食店やカフェ、民家の前にも野良猫のための餌付け場所やひと休みできるスペースが設けられている。餌付け場所には、猫の大好きな餌ときれいな水が常に準備されている。野良猫にやさしい町らしく、通りのあちこちに可愛い猫の看板が目につく。
何匹か人懐っこい猫たちがいて、そんな猫ちゃんたちはいくつかの有名なカフェに決まって出没する。カフェ「青沙浦駅」によくやってくる黄色い猫ちゃんは、観光客から大人気。この猫ちゃんの趣味は、のんびりとカフェの椅子に座って居眠りすることだ。ひと眠りしたら、店内を歩き回りながらお客さんを迎えてくれる。カフェのお客さんたちは、お庭で海を眺めながら猫たちと一緒にゆっくり時間を過ごし、楽しい思い出ができる。
カフェ「イルダ」にも可愛い猫ちゃんモデルが一匹いる。人を怖がらず、むしろレンズの前で色々なポーズを取ってくれるユニークな猫ちゃんだ。このように、青沙浦猫の村にあるカフェやレストランには、猫の「常連さん」がいてお客さんたちを楽しませてくれる。
かわいい猫たちのおかげでホットスポットになったカフェの他にも、青沙浦には見どころのある風景がいっぱいある。カフェのそばの壁画村の路地に入ってみよう。時代の面影がそのまま残る壁には、鮮やかな壁画が描かれている。低い壁の家々が、向こうに見える海雲台の高層ビル群とコントラストをなし、ぬくもりのある風景を演出する。
青沙浦は、もともとは「青蛇浦」と書いた。この地名にまつわる悲しくて感動的な伝説が残っている。その昔、海に漁に出たままの夫を待つチョンさんという女がいた。海に出た夫の訃報を聞いてからも、毎日海を眺めては夫を慕う。それを見ていた龍王がその愛情に感銘を受けて青い蛇を遣わし、夫と再会できるようにしてあげた。そのチョンさんが青沙浦に植えた松の木が大きな「望夫松」となり、300年の間この港を守ってきたという。
青沙浦のランドマークは双子の灯台だ。赤と白の灯台がそびえたち、観光客の目を楽しませてくれる。青沙浦を訪れるほとんどの観光客は、ここでインスタ映えのする写真を撮っていく。灯台の近くで停泊中の漁船や夢中で釣りを楽しむ人々を見物するのも楽しい。
灯台に続く道の入り口には「プルンモレ(青い砂)展示館」がある。展示館の屋上に上がると、白い灯台のオブジェが迎えてくれる。涼しい海風を満喫しながら、双子の灯台とタリットル展望台、青い海が織りなすステキな風景を楽しもう。展示館の1階はマウルバスのバス停になっている。青沙浦の昔の風景を収めた写真を眺めていると、いつの間にかバスが来ている。
可愛い猫たち、居心地のいいカフェ、ロマンチックな灯台と青い海。また来たくなるスポットだ。